大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和38(オ)1161 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理 由

上告代理人青柳健三の上告理由第一点ないし第六点、第九点、第一〇点について。

所論は、上告人らは、不動産取引業者として、本件不動産の売買契約成立の機縁

をもたらしたものであるから、被上告人からの委任の有無をとわず、商法五一二条、

五五〇条二項の規定により、当然被上告人に対して相当の報酬を請求する権利があ

り、また、そのような場合には、知事の告示による最高額の報酬を請求しうる慣習

も存在するのに、原審は、上告人らの右主張に対して、判断遺脱、判例違反、右関

係法条の解釈の誤り、審理不尽ないし理由不備の違法を犯し、ひいては信義則に関

する民法一条二項の適用を誤り、かつ、経験則違背の判断をしているというにある。

しかしながら、不動産取引業者の行為について、所論のごとく、たとえ一般的に

は商法五一二条、五五〇条二項の適用があり、また所論(第九点)のような慣習が

あるとしても、原判決が確定した事実関係、とくに、(一)被上告人の代表Dにお

いて本件土地建物の売却を計画していたが、報酬をめぐる紛争をおそれて取引業者

の介入を好まず、Eに右意図を告げたうえで適当を買受人の斡旋を依頼し、Eもま

た不動産取引業者である上告人A1に対して本件不動産が売りに出ていることを教

えた際、業者が関係しても売主側からは報酬を貰えない関係にあることを申し添え、

さらに、右上告人A1が同業者である他の上告人らに右情報を流したというような

特段の事情があり(原審は、上告人A1はもとより、共同して前示斡旋に当つた他

の上告人らも、売主側においては不動産業者の介入を欲していないことを知つてい

たと推認したものと解される。)さらに、(二)上告人A2は買主側の依頼によつ

て上告人A3、A4とともに本件売買取引につき売主側と交渉したが、右交渉はま

- 1 -

とまらず、しかも、右上告人らは買主側の申出を承諾して右交渉から手を引き、結

局、訴外F不動産株式会社(売主側業者)と訴外G(買主側業者)の仲介により本

件売買契約が成立するに至つたという事情がある本件事実関係のもとにおいては、

上告人らの行為が本件売買契約成立の機縁をもたらしたとしても、売主たる被上告

人から特に依頼を受けるとか、またはこれと同視すべき事情のない以上、被上告人

に対して仲介の報酬を請求する上告人らの主張は失当であるとした原判決は、結局

において正当であり、論旨は判決の結論に影響を及ぼすべき法令違反の主張とは認

めがたい。論旨は、いずれも、採用するを得ない。

同第七点、第八点について。

上告人らは、本件不動産の売買について被上告人からはなんらの仲介の委任をも

受けていなかつたものであるとした原判決の認定は、その挙示の証拠関係から是認

できるから、所論経験則違反の主張は理由がなく、したがつて、民法六五一条二項

に違反するという所論もその前提を欠くこと明らかである。また、前述のように、

上告人らは、かりに本件売買契約の成立につき機縁をもたらしたとしても、本件事

実関係のもとにおいては、被上告人に報酬を請求できない関係にあつたのであるか

ら、所論民法一三〇条に関する主張も論拠を欠くものである。要するに、論旨は、

いずれも、採用に値しない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、

主文のとおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 横 田 正 俊

裁判官 五 鬼 上 堅 磐

裁判官 柏 原 語 六

裁判官 田 中 二 郎

- 2 -

裁判官 下 村 三 郎

- 3 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!